おすすめ映画ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス

NYに恋する理由

ニューヨーク公共図書館エクス・リブリス
を見に岩波ホールへ行ってきました。

フレデリック・ワイズマンが
NY
パブリックライブラリー(NYPL)の
舞台裏を撮った超大作ドキュメンタリー
なんと3時間半の長丁場。

途中インターミッションを挟んで
4時間拘束というオペラのようなスケジュール。

大好きな大好きなNYPLの映画。
ローズ・リーディング・ルームの写真を見たら
もう居ても立っても居られなくなりました。

NYPLといえば、41丁目の5番街にある
あの有名なボザール建築の建物が思い浮かびますが、
実はNY市内にある92の図書館で構成されており、
NY市民およそ800万人の知的生活を支えています。

デモクラシーを支える柱

この映画でいちばん印象に残ったのは
黒人女性として初のノーベル賞作家、
トニ・モリスンの言葉です

Libraries are pillars of democracy

図書館はデモクラシーを支える柱である

あらゆる民族、言語、階級の人々に
平等に開かれたライブラリーという場所は
移民の国、アメリカのデモクラシーを支える
よりどころなのだと実感しました。

(英語のLibraryと日本語の図書館、英語のDemocracyと日本語の民主主義
は微妙に意味が異なるような気がして、漢字表記はしっくり来ないのでカタカナにしました)

実は今年の初め、地元の図書館の利用者懇談会なるものに参加する機会を得て、
区立図書館の運営の難しさ、そして馴染みのあったNYPLとの違い(悪い意味でなく)
を感じていたので、とてもタイムリーな内容でした。

書籍の貸し出しや管理だけでなく、市民生活を支える様々な取り組み、
サービスを提供する公民協働のパブリック・ライブラリーは、
地方自治体が公費で運営する日本の公立図書館とは根本から違うのです。

社会教育機関としての役割

映画の中では以下のような公共サービスが提供されていました。
・移民のための英語教室やパソコン教室
・就職フェア
・シニア向けダンスレッスン
・中国系移民向けの各種サービス
・視覚障害者向けの点字講座
・聴覚障害者が演劇などをより楽しむための手話ワークショップ
・演奏会、講演会、ブッククラブ等

今はどうなんだろうと、NYPLのサイトをのぞいて見たらこんな感じ
・編み物と刺繍サークル
・履歴書の書き方講座
・プロのキャリアアドバイザーによる履歴書の無料レビュー
・エクセル講座、ipadの使い方(中国語のみ)
・大人のための塗り絵クラブ
・英語学習者のためのブッククラブ
・家系図を作るための調査方法講座等

まあ、バラエティに富んだサービスが満載で驚きました。
映画の中でも情報格差(Digital Divide)をなくすための
取り組みが必要という話が出ていましたが、
やはりあらゆる方面で、市民のリテラシーを強化して
より良い市民生活をおくるためのサポートが提供されています。


より寛容な社会のために

日本も人ごとではなく、政府の事実上の「移民政策」によってこれから
益々、いわゆる「移民」に相当する人々の数が増加します。
彼らが日本社会に馴染んで行けるよう行政がサポートできなければ、
今後大きな社会問題になるでしょう。


つい最近、テルマエ・ロマエの作者、ヤマザキマリさんのエッセイ
『国境のない生き方』を読んだのですが、

その中にこんなくだりがありました

「知識や教養は、人と人が限りなく近くための、寛容性を鍛えるためにあるのだ」

まさに、その通り! 

この映画では、その寛容性を育む場としてのライブラリーの在り方を
見ることができました。

また、オープニングとエンディングにグールド演奏によるバッハの
ゴルトベルク変奏曲が流れたり、エルビス・コステロやパティ・スミスの
講演会や分館で行われたバルトークのルーマニア民俗舞曲の
木管アンサンブル演奏会の様子が見られたり、ウォーホルやコーネルが
写真アーカイブを利用していた話などが聞けて、
本好き音楽好きアート好きの心がくすぐられる作品でした。

余談ですが、NYPLは旅行者や短期滞在者でも3ヶ月間有効の
テンポラリーカードを作ることができます。
また、日本の新聞なども読むことができるんですよ。

ホームページも充実しています。
NYパブリック・ライブラリーのウェブサイト(英語)

岩波ホールのページはこちら

 

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DVDはこちらから

 

 

 

 

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